クリニックでDXを推進するメリットとは? DXの基礎知識から詳しい実現方法までを解説!

2023.02.18

政府によって日本全体で推進されているDXですが、日本はまだまだ先進国の中ではDX後進国だと言われています。

昨今では2020年にコロナウィルスが蔓延したことで、お客様側からも対面での診療が嫌がられるような状況となり徐々にではありますがDXを意識した取り組みが否応にも進んでいる状況です。

そこで今回はDX化の基礎知識からクリニックでどのようにDX化を取り入れていくのが良いのかについてお話ししていきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

“DX”という言葉はインディアナ大学で情報学などを指導しているエリック・ストルターマン教授が提唱したとされています。 ストルターマン教授の論文には、DXの定義は「デジタルトランスフォーメーションが、人々の生活のあらゆる面において、デジタル技術が引き起こすまたは影響を与える変化として捉えることができる」とされています。

もう少し噛み砕きますと、「デジタル技術を用いて人々の生活により良い方向に変化させること」と言えます。

上記は元々の意味での使われ方ですが、経済産業省から発出されているデジタルガバナンス・コード(旧DX推進ガイドライン)では以下のように定義されています。 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

上記2つの定義をまとめますと、デジタル技術によって生活をより良くしていく流れからさらに企業の競争の優位性を獲得するところまでが一般的な定義とされています。

DX化とIT化はどう異なる?

DX化と同じような使われ方でIT化という言葉がありますが、それぞれは同じ意味ではありません。 IT化の主な目的は生産性向上としており、従来のアナログからITシステムの導入、紙のデジタル化などを取り入れることでデジタル化していくことにありました。

一方でDX化についてはIT化そのものの意味をもちながらも、あくまでIT化を1つの手段として捉える考え方のため、IT化の1つ上の概念のイメージだと思ってください。

例えますと、IT化は紙のカルテを電子化することにより紙の削減につながりコストが削減できると考える一方で、DX化はIT化を用いて電子カルテにすることで以前からの患者情報の既病歴と今回の問診の内容の照らし合わせることができ本来やるべき治療方針の検討に時間を多く割けるようになり、患者さんに最適な治療を届けること(=満足度の向上)や効率化の改善にも繋げることまでを意味しています。

クリニックのDXで何ができるのか?

DXで何ができるかを考える前にクリニックのビジネス構造について考えておきましょう。

クリニックの収支とは、患者を診療・施術しそれに対する対価をもらう「収入」と働く人たちの給料を支払う「費用」に分かれます。 収入を得るためのプロセスとしては大きく3つに分かれており、「予約、診察・施術、請求」となり費用に関しても大きく3つに分けると「採用、勤怠管理、給与支払」になります。 それぞれでDX化することによるメリットがあります。

事務業務のDX化ポイント

事務業務のDXについては、大きく2つポイントがあります。

まず「予約」です。従来は病院の空き状況を直接尋ねるか、電話確認しかできなかったものが今ではWEB予約システムを導入すればどの程度混んでいるのかがわかるようになります。 電話対応や直接の問い合わせが減るということはその分、患者さん誘導など本来必要な業務に時間を割くことができます。

次に「請求」に関しても従来、人が現金を手渡しでやり取りしていた時代では金銭の渡し間違いが発生しレジ締め作業ができないなんてことがありましたが、今は自動精算機やキャッシュレス決済を導入することで渡し間違いを防ぐのはもちろんのこと、働いている方の業務量も削減できます。

診療業務のDX化ポイント

「診療」のDX化は大きく2つあります。

1つがデジタルカルテの導入です。
従来の紙のカルテからデジタルカルテへの移行は、診療業務のDX化にとって重要なステップです。デジタルカルテには、患者の診療履歴、処方箋、検査結果などが電子的に保存され、患者の情報にすぐにアクセス可能となります。これにより、診療現場での情報共有がスムーズになり、医師や看護師はより効率的な診療を行うことができます。また、データ解析により、診療の質の向上や健康管理の促進にもつながります。

2つ目がオンライン診療です。
診療は対面で行っていましたが対面であるがゆえに立地条件によって患者の多い、少ないがありました。 すごく腕の良いクリニックであっても人がいない限りは収益が発生しなかったところが、オンライン診療を始めることでネットが使える人全員が診療対象となりより多くの人から求められることができます。

患者対応のDX化ポイント

患者の対応についてもDX化ができます。

顧客志向のアプローチ

患者のニーズと期待を理解し、それに合わせた対応を行うことが重要です。これは、患者の声を聞くためのアンケート調査やフィードバックの収集、ミスを減らすための品質管理などを行うことで実現できます。

デジタル技術の活用

デジタル技術を活用することで、患者とのやりとりを円滑にすることができます。例えば、オンライン予約、遠隔診療、電子カルテ、自己診断ツール、自己管理アプリなどがあります。

統合された情報管理

患者の情報を統合的に管理することで、医師や看護師がより迅速かつ正確に情報を得ることができます。これにより、医師がより正確な診断を下すことができるだけでなく、患者がより適切な治療を受けることができます。

教育とコミュニケーション

患者が健康について正しい知識を持ち、適切な行動を取ることができるよう、教育とコミュニケーションが重要です。例えば、病気や治療法についての教育、薬の服用方法や副作用についての説明、健康生活のアドバイスなどが含まれます。

スタッフマネジメント業務のDX化ポイント

マネジメントに関しても2つDX化ポイントがあります。

まず「採用」に関してですが採用時のクリニックのルール説明を動画にすることで何度も同じ説明をする手間を省くことができ、また社会人として身につけておきたいスキルをオンラインで受講し学ぶことができます。 実戦についてはクリニック内で教えることが多いと思いますが、一般的な内容は動画にすることで代替することができます。

次に「勤怠管理」「給与支払」の稼働が削減できるでしょう。今までタイムカードを押して管理していた場合ですと、最終月に手動で給料計算が必要であったり、タイムカードの押し忘れがあった場合何時から勤務しているのかが明確にわからなかったりします。

その点DX化すればタイムカードの置く場所自体も不要になりますし、ほとんど自動で勤務時間の計算、給与計算が可能となります。 また本来勤務予定の方が来ていなかった場合に管理者にアラートを送ることだってできます。

経営管理のDX化ポイント

経営管理では今までの収入、費用のプロセスをDX化し、全体をDX化した結果を用いることで経営改善が実現できます。 例えば、収入の観点で言いますと収入は数と回転率と単価で大まかに計算できます。

数はもちろん患者数ですが、新規の患者数が多いのか、既存の患者数が多いのかをWEB予約に項目を設けておけば確認できます。 仮に新規の患者数が少ないようであればオンライン診療を取り入れることで新しい患者数を増やすことが可能です。

また患者数と一言で言っても、ステップが大きく分かれます。問い合わせ数→予約数→来院数→診療数 と最初から最後までをDX化して管理した場合どこで患者さんが離れていっているのかを検討することができます。 来院から診療までの数が極端に少なくなっているのであれば待ち時間の改善をすることで対策が可能ですし、予約から来院の数が減るのであれば立地による影響かもしれないためオンライン診療の導入しても良いでしょう。

このようにDX化することで経営全体を支えてくれるのです。

クリニックのDXはなぜ進まない?

クリニックのDX化が進まない理由は大きく2つあると考えます。

1つがデジタルに精通している人がいないからです。
当然ながらデジタルはお医者さんの専門領域ではありません。またクリニックの場合、ITエンジニアを雇い新たなサービスをリリースすることもなければ 裏でデータ管理を保守している従業員を雇っている訳でもないため他と比べてデジタルに触れる機会が少ないのです。

2つ目が業界の傾向です。
クリニックの業界は専門性の高い領域です。それゆえに他者が介入することが難しく、エンジニアであってもシステムに精通した方はそう多くはないでしょう。 また直接患者さんの身の危険にも関わる業界だからこそ過去からできているのであれば特に変える必要ない。むしろ変えた後に失敗すると取り返しのつかないことになる業界だからこそ積極的にDX化を取り入れることが難しいように感じます。

クリニックにおけるDX化の進め方

DX化と言ってもとても幅広いためクリニックにおいてDXを検討していくためには、まず目先で改善したい課題から着手してみることをオススメします。 そのためのステップを5つに分けて紹介します。

1. 解決すべき課題を明確にさせる

まず最初は解決したい課題を明確化することです。 どんなことでも構いません。今実際に手間になっていること、不満なこと、患者さんから指摘されていることなど、ここでは多くの課題を挙げることが大事です。 課題が出てきましたらピックアップされた中から優先順位をつけます。

2. 人材の確保、ツール導入を推進する

次に最初に挙げられた課題をDX化できないかを検討し、DXについて詳しい人材の確保、ツールの導入をしましょう。 実際にDXのコンサルタントから意見を聞いてみるのも良いですし、自身で検索して改善できそうなツールを取り入れてみても良いです。

患者さんのセンシティブな情報ゆえに失敗したくない場合は人材から適切なサービスを紹介してもらうのが良いでしょう。ただし方法としては必ずしも雇って常駐してもらう必要はありません。 外部からのDX支援サービスもありますので自身の課題を解決できそうなものを探すところからスタートです。

3. データを収集し分析を行い、現実との乖離を確認する

DX化を今までアナログで対応していたことが数値として現れます。

従来は感覚で取り組んでいたことをデータを収集することで共通の認識として把握することができます。 実際に多くの方は実データと自身が感じる感覚値が一致することはありません。まずは数値として出てきたものを正しく理解することから始まります。

4. DX化で業務プロセスを変更する

次に導入したツールを用いて従来取り組んでいた業務を改善していきます。

業務プロセスの改善例はDX化のポイントでもお話ししましたが、意識すべきことはIT化だけにとどまらないことです。 単に勤怠管理ツールを導入しただけに終わるのではなく、勤怠管理ツールによる給与支払いまでの効率化はもちろん、各従業員の勤務状況も把握できます。

さらに傾向をとれば患者さんからお褒めの言葉をいただく時と頂かない時で働く人に共通項を見出せるかもしれません。 こういったように、単なるITツールの導入から組織全体を良くする動きを合わせて考えてください。

5. デジタル技術の活用を進め、多機関との連携を推進する

最後は自分のクリニックだけではなく、外部の機関との連携を図ることです。

こちらはハードルが高いですが、理想は他のクリニックに通っていた患者さんの情報がクリニック間でデータ共有し見ることができれば過去の診察内容、施術結果を見逃すことはありません。 他機関と連携をすることでDX化はより効果を発揮していきます。

まとめ

今回はDXの考え方からIT化との違いなど基本的な知識から実際にクリニックの現場でどのようにDX化していくべきかをお伝えしました。 まさにこれからDX化を検討していくクリニックも多いと思います。DX化推進にあたり、最も重要なことはクリニックの課題を明確にしどのように対処したいのかを把握することです。

課題と対応したい方向性が決まれば、DX化のツールを探す方法もありますが、デジタルに精通していないクリニックの場合はDX化推進の専門家からサポートしてもらうことでスムーズに進めることも可能です。自社のDX化に最適なツールや、パートナーを選び、理想のDXを実現してみてください。