歯科医院を開業するために必要な資金とは?初期費用や運営資金の見積もり方法を解説

2023.03.22

歯科医院の開業にはどのくらいの資金が必要なのでしょうか。今やコンビニの数よりも多いと言われている歯科医院ですが、独立・開業しようとする歯科医師の数が多いのもまた事実です。

そのため、競合との差別化を図り、経営を安定させていくことは至難の業と言えるでしょう。そんな歯科医院ですが、どのように初期費用を見積もり、開業後の運転資金を見積もれば良いでしょうか。

ここでは、具体的な費用とともに、歯科医院開業に伴う初期費用や資金の調達先について詳しく解説していきます。

歯科医院開業資金の必要性

当然ですが、歯科医院の開業には多額の費用が発生します。その費用は、他の診療科と比べても多い傾向があり、あらかじめ資金の目処をつけておく必要があります。

また、自己資金だけでまかなうことはほぼ不可能であるため、適切な額を、適切な金融機関から借り入れる必要もあるでしょう。

歯科医院開業の費用

先ほども述べた通り、歯科医院の開業には特に多くの資金が必要と言われています。医院を開業する地域によっても異なりますが、最低でも5000万円以上は必要でしょう。

さらに、導入する歯科医療機器や歯科商材によっては、7000万円を超えることもあります。

開業資金の調達方法

歯科医院の開業には、もちろん自己資金を活用する手もあるでしょう。 しかし、全ての費用を自己資金のみでカバーすることは不可能であるため、金融機関等から融資を受ける必要があります。また、親族から借りたり、開業後に国の補助金を活用したりする方法などもあります。

多種多様にある借り入れ方法の中から、ご自身にとって最適な手段を選ぶことが重要となっていきます。

歯科医院開業資金の内訳

では、歯科医院開業に必要な資金は、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、「設備費用」「建物費用」「人件費」「その他」の4つに分けて紹介していきます。

設備投資費用

歯科医院の開業に欠かせない医療機器の購入には、平均して2000〜3000万円の費用がかかると言われています。

例えば、患者さんの治療を行うチェアユニットには、1つあたり大体200〜300万円の費用がかかるため、仮に3台購入するだけで1000万円近い費用がかかることになります。また、バキュームなどを導入するにあたって必要な工事費用に1000万円、レントゲン機器を導入するのであればさらに1000万円追加でかかっていきます。

他にも細かい医療機器があるため、3000万円以上の資金を用意しておく必要があるのです。

建物賃貸費用

建物賃貸を借りるためには、その他諸々の費用の中でも特に高いコストがかかってしまいます。

もちろん、東京や大阪で開業する場合と郊外で開業する場合では、その費用は多少異なります。一般的に、郊外で開業する場合でも最低500万円、都内で開業する場合には、750万円以上かかると言われています。

さらに具体的な内訳としては、「数ヶ月分の賃貸料、敷金・礼金、仲介手数料」が挙げられるでしょう。物件によって、初期費用は前後しますが、少なくとも賃貸料の10ヶ月分ほどは予算に組み込んでおく必要があります。

人件費

当然ですが、受付スタッフをはじめとし、歯科助手や歯科医師など、歯科医院運営に関係する全てのスタッフに対する人件費も、初期費用に組み込んでおかなければなりません。

保険診療分のうち、国から支払われる7割分は、開業してから2ヶ月後に初めて入ってくるため、それまでは自己資金でまかなわなければなりません。

そのため、事前に資金調達の段階から、最低3ヶ月分の人件費を払えるだけの資金を確保しておく必要があります。

その他の費用

歯科医院は競合クリニックが多いため、新規開業に伴う宣伝広告費には多くの費用が必要になります。それだけでなく、開業後最低2ヶ月の間は窓口負担分のみで経営していかなければなりません。

そのため、人件費はもちろん、資材費や水道光熱費、技巧費等さまざまな費用を負担する必要があります。

歯科医院開業資金調達の方法

では、歯科医院開業に際して、資金を調達する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、「ローンの利用」「補助金」「投資家からの資金」の3つに分けて紹介していきます。

ローンの利用

ローンの利用、つまり金融機関からの融資を受ける方法は、歯科医院開業に際して最も一般的な方法と言えます。

しかし、民間の金融機関から借り入れをする方法は、ハードルが高く、金利も高いため、まずは「日本政策金融公庫」からの借入を検討してみることがお勧めです。民間に比べ、低金利で借り入れることが可能であり、特に「新規創業融資制度」を利用すれば、無担保・保証人無しで上限3000万円まで借り入れることができます。

また、厚生労働省が管轄している「福祉医療機構」と呼ばれる金融機関があり、ここでは主に医療機関の経営者向けに貸付を行っており、長期間・低金利での借入を受けることができます。

政府系補助金の活用

金融機関からの借入だけでなく、政府系の補助金も上手く活用していきましょう。補助金であれば、返済する必要がないため、開業に対する負担を軽減することが可能です。

その種類としては、「IT導入補助金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「トライアル雇用助成金」など多種多様に存在しています。それぞれを、ご自身の歯科医院と比較した上で、受給できそうな補助金は積極的に活用していくようにしましょう。

投資家からの資金調達

投資家からの調達に関しては、一般的な投資家からはもちろんですが、特に親族からの借入も視野に入れておくことをおすすめします。金融機関の場合と異なり、親族であれば無利子で貸してくれる可能性が高いでしょう。

また、歯科医院開業資金は高額になる傾向があるため、少しでも親族からの資金を獲得しておくことで、借り入れのハードルを下げておくことが良いでしょう。

しかし、「贈与」として資金を受け取る場合には、税金がかかってしまう可能性があるため、受け取り方に気をつけるようにしましょう。

歯科医院開業資金の計画と調達方法の選定

歯科医院の開業に伴って、開業資金の調達計画はどのようなステップを踏んで選定すれば良いのでしょうか。ここでは、「資金調達に必要な準備」「調達計画」「資金調達先の比較」の3つのポイントに絞って、紹介していきます。

資金調達に必要な準備

資金調達に際して、まずは概算で何にどのくらい費用がかかるのかを算出する必要があります。具体的には、家賃や人件費といった「固定費」、設備投資や開業にかかる「初期費用」といったものが挙げられます。

これらを簡単に算出した上で、いくら借りて、どのくらいの期間でいくらずつ返済していくのかといった内容を記した事業計画書を作成しましょう。

資金調達の計画

歯科医院の経営にかかる費用の概算が出せた後に、具体的にどの金融機関・調達先から、いくら融資を受けるかを決めていきます。

しかし、金融機関によって借入限度額が決まっている場合が多いため、事前のリサーチを入念にした上で、自己資金や親族からの借入なども含め、慎重に借入計画を作成していきましょう。

資金調達の選択肢の比較

先程の資金調達計画と関連していますが、具体的な調達希望額が決まったら、数ある資金調達先から、最適な組み合わせを選定していく段階に入りましょう。

借入額が高額なだけに、1つの金融機関のみでは、恐らく全額調達することは難しいと言えます。そのため、さまざまな調達先を吟味し、返済額がなるべく大きくならないよう、プロのコンサルタントなどへの相談も通じて決定していくことをおすすめします。

歯科医院開業に向けた資金調達の注意点

そんな歯科医院開業に伴う資金調達ですが、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。 ここでは、「資金調達に伴うリスク」「資金調達の際の契約書確認」「税務処理の注意点」「借入金返済計画」の4つのポイントに分けて紹介していきます。

資金調達に伴うリスク

資金調達に伴うリスクとして、医院の経営が上手くいかなかった際の高額な借金を抱える可能性がある点が挙げられるでしょう。

当然ですが、事業計画がずさんであればそもそも資金を調達することができません。仮に、たまたま資金が調達できたとしても、歯科医院へ来院される患者さんが増えなければ、経営が上手くいかなくなり、最終的には経営破綻になりかねません。

そうなってしまえば、1億円近い借金を背負うことになりかねないのです。そのため、事前の事業計画作成の段階で、競合に打ち勝つことができる強みを持った上で、作成するようにしましょう。

資金調達の際の契約書の確認

資金調達の際には、先方から提示された契約書にはしっかりと目を通すようにしましょう。 その際に、歯科医院開業に詳しいプロのコンサルタントも介しておくことで、確認漏れのリスクを最大限減らすことができ、結果的に、トラブルを回避することにつながります。

もし契約書の内容を確認せずに契約してしまい、ご自身の思っていた内容と異なってしまうと、最悪の場合、事前の計画より多額の返済をしなければならなくなる可能性があります。

資金調達における税務処理の注意点

税務処理に注意が必要なのは、特に親族からの借入を受けるときです。「借入」として資金提供を受けるのであれば問題ないのですが、「贈与」として提供される場合には、年間110万円を超えた分には税金が発生します。

課税方式に「相続時精算課税」を選ぶことで、税金を支払う必要がなくなりますが、わざわざ「贈与」として受け取ることで、気付かぬうちに税金が発生していたという事態を防ぐためにも、受け取り方には十分注意しましょう。

資金調達の借入金返済計画

借入金の返済といっても、一概に全ての借入金を同じ年数で返済していくことができるわけではありません。

例えば、設備資金であれば長くて15年かけて返済していくことが可能ですが、運転資金の場合、一般的に5〜7年となることが多くなっています。このように、全て同じ年数で返済できる前提で返済計画を作成していると、開業後に修正を余儀なくされてしまうため、あらかじめプロに相談するなどして、適切なフィードバックを受けておくことをおすすめします。

まとめ

歯科医院の開業には、多くの高いハードルが存在することをお分かりいただけたと思います。しかし、1つ1つ着実に乗り越えていくことで、地域から愛される素晴らしい歯科医院を作り上げていくことは可能です。全てのステップを怠らず、正確に駆け上がっていくことを意識しましょう。