クリニックにおける電子カルテの重要性とは⁉︎ 電子カルテ導入のメリット・デメリットを徹底解説!

2023.03.17

「クリニックに電子カルテって必要なの?」「電子カルテって安全なの?」と疑問に感じている方、多いのではないでしょうか。結論としては、電子カルテを導入することによるメリットは計り知れません。

また、インターネットが普及した現代、ネット環境のセキュリティは、紙媒体による保管の安全性をも凌ぐと言われています。ここでは、そんな「電子カルテ」を活用する重要性を始めとし、「電子カルテ」導入のメリット・デメリットまで、詳しく解説していきます。

電子カルテとは?

そもそも、電子カルテとはいったい何を指すのでしょうか。具体的には、パソコン等を利用してカルテの記入や保存を行うことができる媒体のことを指します。

カルテ自体は、医師による診察内容や所感などが記載されているものを指しますが、電子カルテの場合は、会計システムとリンクしてることが多いため、「電子カルテシステム」と呼ばれることも多々あります。そんな電子カルテですが、生来のカルテ同様に、重要な書類として保存が定められています。

特に、厚生労働省が発表している「電子カルテの保存三原則」として「真正性」「見読性」「保存性」の3つの点に注意しなければならないとも定められています。

クリニックにおける電子カルテの重要性

通常の中小規模病院と比べ、規模の小さいクリニックの場合、電子カルテを導入することに消極的になってしまいがちです。しかし、ICTの利用が広まる中で、電子カルテを導入することは当たり前になってきています。

とはいえ、電子カルテを導入することには、メリットだけでなくデメリットもあるため、慎重に検討をしていく必要があります。検討を重ねた上で、ご自身のクリニックに最適な電子カルテを導入することができれば、業務の効率化への大きな手助けとなることは間違いありません。

クリニックに電子カルテを導入するメリット

では、クリニックへの電子カルテ導入には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、「効率的な診療」「高品質な医療提供」「正確な情報共有」「業務負担の軽減」「患者満足度の向上」の5つのポイントに分けて、紹介していきます。

効率的な診療が実現できる

電子カルテを導入することにより、受付スタッフによるカルテ出しの時間や診察時の書類作成の時間などが大幅に削減できるため、患者対応のスピードが格段に速くなります。

電子カルテでは、あらかじめ紹介状などのテンプレートを用意しておくことが可能であるため、1人の患者さんにかかる無駄な時間を省くことができ、結果的に、より多くの患者さんを対応することができます。

また、カルテ画面を患者さんと共有することができるため、治療方針の説明などを含めたコミュニケーションを円滑に行うことも可能となります。

質の高い医療・施術の提供に繋がる

紙カルテの場合には、記載漏れ等の人為的ミスが起こりやすいですが、電子カルテの場合は、診療計画や処方箋に関する情報をわかりやすく閲覧することができるため、安全に医療提供を行えます。

例えば、処方箋のオーダーなども、あらかじめ設定しておいたリストから選択できたり、用法・容量まで定めることができるため、記載ミス・伝達ミスを防ぐことができます。また、医療用AIとの併用で、緊急性の高い患者さんから順に並び替えることもできるため、重症化する前に優先的に治療を行うことも可能となるのです。

患者情報の正確な管理・共有が可能になる

情報共有が正確・迅速に行える点も、電子カルテを導入する大きなメリットであると言えます。ネット環境さえあれば、パソコンはもちろん、タブレット端末等でも確認できるため、診療記録を素早く伝達することができます。

また、紙カルテならではの「手書き文字の読みにくさ」がなくなるため、スタッフによる情報の読み間違えが起こりにくくなります。加えて、変更日や変更者の記載が法律によって義務付けられているため、紙カルテと比べても信頼度の高い媒体なのです。

クリニックにおける業務負担の軽減が可能に

電子カルテを利用することにより、カルテを探す手間が省けたり、カルテに手書きで記載する時間が省けたりと、多くの時間を削減することができます。

また、会計システムとリンクしていることも多いため、受付業務をさらに効率化することにもつながります。つまり、クリニック経営に関わる全ての業務を効率化することができ、結果的に、全てのスタッフの負担の軽減へと繋がるのです。

患者満足度の向上にも寄与

効率的な診療とも関係しますが、クリニック経営に関する全ての業務を効率化することができるため、スタッフの労力削減だけでなく、患者さんの待ち時間を削減することにもつながります。

対面治療の際には、受付での待ち時間や診察時間、会計までの時間など多くの「待ち時間」が発生します。こうした「待ち時間」は患者さんにとって大きな負担となり、こうした負担を取り除くことができれば、自ずと患者満足度の向上へと繋がるのです。

クリニックに電子カルテを導入するデメリット

一方で、電子カルテの導入にはデメリットも存在します。ここでは、「導入コスト」「機器トラブルの可能性」「慣れるまでの手間」「プライバシー保護の遵守」「医師や看護師のスキルアップ」の5つの観点で、紹介していきます。

電子カルテの導入にははコストがかかる

主要なデメリットであるのは、やはり導入に際して発生するコストでしょう。初期費用はもちろん、サーバー代やメンテナンス費など多くの費用がかかります。

そのため、導入することによって、どれだけ業務を効率化できるのかといった、費用対効果の面をしっかり見定めることをお勧めします。

機器の故障・トラブルによる影響を受ける場合もある

電子カルテの場合、クリニック内の電気系統にトラブルがあったり、インターネット環境に不具合があったりすると、ほぼ全ての業務に影響が出てしまう恐れがあります。

また、サイバー攻撃などによる情報漏洩のリスクも懸念されるため、セキュリティ保護の観点での対策は必要不可欠と言えるでしょう。

利用方法の定着やデータ管理には手間がかかる

電子カルテを導入してから初期の頃であれば、その利用方法に慣れるまで、逆に業務効率が下がってしまう可能性があります。

また、慣れるまでは、電子カルテ上に入力することが手間に感じてしまうスタッフがいてもおかしくありません。それだけでなく、通常の診察業務時とは異なり、電子カルテを管理するITスタッフの採用も必要であれば念頭に置いておく必要があるでしょう。

患者プライバシー保護に関する規制・ガイドラインを遵守する必要がある

紙カルテと同様に、電子カルテを利用する際でも、厚生労働省によって定められている「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守している必要があります。

電子カルテを導入するにあたって、当然のこととは言えますが、患者さんのプライバシーを保護するためにも、再認識しておく必要があるでしょう。

医師・看護師のスキルアップが求められる

ITリテラシーがあまりなく、パソコンでのカルテ管理に慣れないスタッフの場合、電子カルテの使い方に関する研修が必要になってきます。

しかし、そこで電子カルテに対する拒否感を感じてしまった場合、スタッフの離職につながりかねません。そのため、あらかじめITリテラシーが高い若手スタッフを雇っておくなど、できる限りの対策をしておきましょう。

電子カルテ導入に向けた準備と導入方法

では、実際に電子カルテを導入するとなった際に、どのような準備をした上で、どのように導入すれば良いのでしょうか。

ここでは、「導入システムの選定」「使用法・活用法の検討」「患者情報の整理」「スタッフへのトレーニング」「導入後の管理体制」の5つの段階に分けて紹介していきます。

電子カルテ導入に必要な機器・システムの選定

まずは、実際にどの電子カルテサービスを導入するかを決めることから始めましょう。ご自身のクリニックに最適な機能が備わっていて、なおかつ予算内に収まっているか否かを慎重に検討した上で、導入するサービスを決めるのが良いでしょう。

導入サービス企業からのフィードバックなども参考にしながら選んでいくと、スムーズに導入サービスを選定することができるはずです。

電子カルテの実際の使い方と活用方法を検討する

導入する電子カルテサービスが決まったら、実際にどのように利用していくのか、どのような書類テンプレートを作成するのかを吟味していきます。

既に紙カルテを利用している場合は、電子カルテに移行できるものは全てテンプレートを作成し、できるだけ容易に操作ができるように設定しましょう。

導入前の患者情報の整理と移行方法を決定する

導入サービスの選定や利用方法が定まったら、導入前の患者情報の整理を行いましょう。また、患者番号や患者さんの名前など、転記ミスがないよう、慎重に移行方法を選んだ上で、電子カルテに情報を移していくようにしましょう。

スタッフのトレーニング・教育の実施

患者さんの情報等の移行が完了し、一通りシステムの設定も完了したら、導入前の最終ステップとして、スタッフのトレーニングを行いましょう。

医師はもちろん、看護師や受付スタッフなど全てのスタッフが、電子カルテの利用を理解している状況を作ることで、電子カルテ導入の最大のメリットである「業務の効率化」を最大限に発揮することが可能です。

導入後の管理・保守体制の整備

電子カルテ導入後も、気を抜いてはいけません。導入直後には、トラブルが見込まれるからです。そのため、電子カルテサービス企業と連携しながら、1つ1つ課題を解決していき、最終的にはクリニックのみで電子カルテを活用できることを目指しましょう。

クリニックにおける電子カルテ利用状況と今後の展望

では、電子カルテは実際にどのくらい普及しているのでしょうか。また、電子カルテには、今後どのくらい可能性があるのでしょうか。

医療機関における電子カルテ利用率の推移

厚生労働省の資料によると、令和2年時点で、400床以上の病院では、9割以上の病院で電子カルテが導入されています。

一方で、200床未満の病院では、依然として電子カルテを導入している病院は半数にも満たないという結果が出ています。法律で、19床以下の医療機関を「クリニック(診療所)」と定義しているため、クリニックにおいて、電子カルテはまだまだ普及しきれていないと言えるでしょう。

電子カルテの普及に伴う医療現場の変化

電子カルテの利用により、患者さんに関する情報を手軽に閲覧・共有することができます。そのため、患者数が多くなればなるほど、電子カルテを導入するメリットも増加していくのです。大規模病院での普及率が9割を超えているのも、病院スタッフだけでなく、患者さんへのメリットが大きいことが要因でしょう。

また、電子カルテの普及は、厚生労働省からも後押しされています。2020年までに、全医療機関のうち、9割以上で電子カルテを普及させるという目標を掲げていたほどです。

今後の医療現場における電子カルテ利用の可能性

業務を効率化できる点、診療データを容易に解析できる点などを含め、今後の医療現場において、電子カルテの普及はさらに促進されていくでしょう。

また、近年では地域にコミットする「プライマリケア」の概念も普及してきていることから、患者さんに最適な治療を提案することを可能とする「電子カルテ」の導入は、もはや必要不可欠と言っても過言ではないでしょう。

まとめ

電子カルテは、現代の情報革命の波に乗った、クリニック経営の成功に欠かせない「業務の効率化」を最大限に手助けしてくれる存在です。 これを機に、今一度自身のクリニックの運営体制を見直し、電子カルテを導入することを前向きに検討してみてはいかがでしょうか。