美容皮膚科にオンライン診療を導入するには?メリットやデメリット、導入の流れを詳しく解説

2023.03.03

近年、新型コロナウイルスの流行などによって、「オンラインワーク」や「オンライン留学」など、さまざまな業務の「オンライン化」が進んでいますが、医師による診察も例外ではありません。

多くのインターネット広告でも目にすることが多くなってきた「オンライン診療」ですが、どのように導入すればいいのでしょうか。また、「オンライン診療」を導入することによって、どのようなメリット・デメリットが発生するのでしょうか。ここでは、特に美容皮膚科として「オンライン診療」を導入する場合について、ご紹介していきます。

オンライン診療とは?

そもそも、オンライン診療とは一体なんでしょうか。厚生労働省が発表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び 診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。」とされています。

つまり、スマートフォンやパソコン等で、チャットツールやビデオ通話サービスを利用し、診察から処方までを行うことができる診察方法のことです。

美容皮膚科におけるオンライン診療とは?

では、美容皮膚科におけるオンライン診療には、どのようなものがあるのでしょうか。基本的には、通常のオンライン診療と大きく異なる点はありません。

ただ、通常の診療と比べ美容皮膚科の診療には、外科的治療(レーザー治療など)が含まれることが多いため、そういった治療には、どうしても対面で診察・治療を受ける必要が出てきます。

美容皮膚科のオンライン診療で提供できる診療内容

では、美容皮膚科のオンライン診療で、実際に行うことができる主な診療内容はどのようなものがあるのでしょうか。

具体的には、ニキビ治療、シミ・そばかす治療、脱毛(カウンセリングのみ)、美白治療、スキンケア指導等があげられます。ここでは、それぞれの診療内容について簡単に紹介していきます。

ニキビ治療

「ニキビ治療」は、男女問わず多くの方が悩みうる症状の1つでしょう。そんな「ニキビ治療」ですが、保険診療では、多くの場合、内服薬や外用薬による治療が行われます。

また、「ニキビ治療」は長期間にわたることが一般的であるため、定期的な通院を行わなければなりません。しかし、オンライン診療を利用することで、定期的な通院にかかるストレスやコストを大幅に削減することが可能です。

シミ・そばかす治療

女性でお悩みの方が多い、「シミ・そばかす」の治療も、外用薬・内服薬ともに処方することが可能です。

効果が出るまでに長い時間が必要な症状のため、わざわざ病院まで行かずに、オンラインで診察・処方までしてもらえることは、大きなメリットであるでしょう。

脱毛(カウンセリング)

近年注目されている脱毛ですが、実際の治療をするためにはどうしても対面で行う必要があります。

しかし、事前のカウンセリングには多くの時間がかかってしまうため、オンラインで診察することによって、患者さんはストレスなく、カウンセリングから治療までうつることができます。

美白治療

医療機器を使用した施術は、対面で行う必要がありますが、多くの患者さんは、継続的な薬の処方を望んでいます。そのため、オンラインに移行することで、気軽に隙間時間で利用することが可能になります。

スキンケア指導

正しいスキンケア方法について、医師からアドバイスをもらいたいと感じても、他者の目が気になる患者さんは多いと思います。そこで、オンライン診療を導入することで、こういった患者さんに、ストレスフリーで診察を受けていただくことが可能です。

美容皮膚科にオンライン診療を導入するメリット

では、美容皮膚科にオンライン診療を導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、「通院における時間負担の軽減」「場所を問わない診察が可能」「24時間可能な予約」「会計にかかる待ち時間の削減」「院内感染のリスクがゼロ」、これら5つに分けて紹介していきます。

通院にかかる時間負担の軽減

通常、対面による診療の場合、病院までの来院時間を必ず確保しなければなりません。これは、仕事や学校で忙しく、まとまった時間がなかなか取れない方にとっては、診療への大きな障壁となりかねません。

しかし、オンライン診療では、来院時間が必要ないため、空いている隙間時間での診察が可能となり、かなりの時間や労力を削減することができます。

どこに住んでいても、移住地や場所を問わず、診療を受けることができる

オンライン診療によって、場所を問わず、どこでも診察を受けることが可能になります。仕事の合間に近くのカフェで受けることもできますし、電車が来るのを待っている間にも診察を受けることが可能です。

さらに、引っ越した際に、再度かかりつけ医を探す必要がないことも大きなメリットであると言えるでしょう。

24時間いつでも予約が出来る

対面診療の場合、来院予定の病院の診察時間でのみ診察予約をすることが可能なクリニックがほとんどです。 しかし、オンライン診療の場合、多くのサービスにおいて、24時間予約を受け付けていることが多く、ふと気づいたときに即座に予約をすることができます。

会計の待ち時間が不要となり、手間が減少する

対面診療の場合、診察終了後の会計までの待ち時間や支払い時間、処方箋を受け取る時間などが必要です。しかし、オンライン診療を利用した場合、多くのサービスにおいて、事前にクレジットカードを登録しておくため、それらの待ち時間をゼロにすることが可能となります。

院内感染・二次感染の心配がなくなり、コロナ対策も可能

オンライン診療では、単純に他者との接触を避けることができます。そのため、院内感染のリスクがなく、現在流行している新型コロナウイルスの感染防止にも繋がります。

美容皮膚科にオンライン診療を導入するデメリット

一方で、美容皮膚科にオンライン診療を導入することには、どのようなデメリットが存在するのでしょうか。

ここでは、「導入にかかる初期費用や月額コスト」「ITリテラシーが必要」「誤診の可能性がある点」の大きく分けて3つの点で紹介していきます。

システムの導入に初期費用や、月額利用料など費用がかかる

利用するオンライン診療サービスによっては、初期費用に数十万円ものコストがかかる場合があります。

一方で、初期費用・月額利用料ともに無料で利用できるサービスもあります。ご自身の利用したい機能等によって、どのサービスを利用するのか、的確な判断をする必要があるでしょう。

システムを使いこなす、ITリテラシーが必要となる

当然ですが、オンライン診療には必ずスマホやパソコンといったインターネット端末を利用することになります。

そのため、長年アナログで診察を行なってきた医師であると、デジタル機器に慣れていくところから始めなければなりません。また、診察時の機械トラブルにも、ある程度対応できるようにしておく必要もあるでしょう。

適切な診断を出せないケースや、誤った診断を行ってしまう可能性もある

仮にビデオ通話を通して診察をするとしても、触診をすることはできませんし、対面時よりも視診の精度も落ちてしまいます。そのため、適切な診断ができなかったり、最悪の場合、誤診をしてしまうケースも想定できるでしょう。

美容皮膚科にオンライン診療を導入するには?

では、実際にオンライン診療を導入するには、どのようなステップがあるのでしょうか。ここでは、「利用するシステムの選定」「システムのセットアップ」「厚生局への届出提出」「診療内容・対象患者の決定」「診療計画書の作成」「患者さんやスタッフへの使用法の周知」の合計6つのステップに分けて説明していきます。

オンライン診療に使用するシステムを選定する

まず初めに、「使用するサービスを決める」ことから始めましょう。ご自身の展開したいオンライン診療像にふさわしい診療サービスを選ぶ必要があります。

その際に、料金差で選ぶことはお勧めできません。しっかり、中身の機能面で充実しているサービス、ご自身の理想的な診療を行えるサービスを選ぶことが重要です。

システムのセットアップを行う

利用するサービスが決まったら、実際にシステムをセットアップしていきます。サービスによっては、企業側がセットアップをしてくれる場合もありますが、基本的には、サービスの扱い方に慣れるという面でも、ご自身で行ったほうが良いでしょう。

その際には、しっかり音声が聞こえるか、映像が映るか等、診療時に少しでも不具合を減らすことができるよう、できる限りのチェックをしておきましょう。

厚生局へ届出を行う(※保険診療を行わない場合は不要)

保険診療を行わない場合は不要ですが、保険診療を行う場合、厚生局へ届出をする必要があります。届出の認可までに時間がかかる場合があるため、できるだけ早く届出を出しておくことをお勧めします。

オンライン診療の内容や、対象患者を決める

オンライン診療は、全ての患者さんに適用できるわけではありません。対面での処置が必要な場合や、急病などには利用できません。 そのため、患者さんの中で、オンライン診療に移行することが可能な患者さんを決定した上で、オンライン診療の内容も決めていくようにしましょう。

オンライン診療計画書を作成する

オンライン診療を行う前に、必要事項が記載された「オンライン診療計画書」を作成し、患者さんの合意を得る必要があります。記載する必要のある項目は、以下の通りです。

「具体的な診療内容」「オンラインと対面診療の組み合わせの頻度やタイミング」「診療時間に関して」「診療方法」「オンライン診療を行わない条件と、対面に移行する可能性がある旨」「患者さんが診察に積極的に協力する必要がある旨」「急変時の対応」「診療にかかわる可能性がある医師の氏名やその医師が関わるケース」「セキュリティリスクに関する責任について」の9項目について記載する必要があります。

患者へスタッフへ、オンライン診療システムの使い方を周知する

患者さんにはもちろん、他の医療スタッフにも、オンライン診療システムの使い方を教える必要があります。当日の迅速な診察のためにも、事前の説明を入念にしておくことで、不要なトラブルを避けることができます。

仮に、トラブルが多発してしまうと、オンライン診療のメリットである、「圧倒的な時短」が失われてしまう可能性があります。

美容皮膚科にオンライン診療を導入する前の注意点

オンライン診療に関する法律は、頻繁に改正・見直しが行われています。特に、新型コロナウイルスにより、近年では大きな改正も珍しくありません。そのため、常日頃からアンテナをはり、最新の情報に目を凝らしておく必要があります。

まとめ

ここまでご覧いただいた通り、オンライン診療には多くのメリットがあります。一方で、デメリットも確実に存在しています。

そのため、全てをオンラインで行うのではなく、適切な頻度とタイミングで、対面診療と混合で行っていくことがベストな手段なのではないでしょうか。まずは、患者さんの視点に立って、患者さんに最適な方法を見つけていく必要があるでしょう。